【Q】七種泰史
既存のデジタルフォントに満足していますか。
また、その理由をお聞かせください。

【A】棚瀬伸司
不満です。デジタルだから。かといって、アナログに戻ったら満足かというとそうでもなく、今より不便なことに対して不満になると思います。

【A】奥村昭夫
なにごとに於いても満足したことはない。明日はもう少し良くなると考え生きている。

【A】池上貴文
写植にもデジタルフォントにも、これで満足と思ったことはありませんが、写植時代には、こんなときはコイツ、あんなときはアイツといった相棒みたいな書体がありました。デジタルフォントにはまだ見つかっていません。

【A】山田正彦
満足していません。かつて写植時代にはいくつか好んで使った書体がありました。
 では、それほどまでに写植文字がいいのかというと、エッジのききすぎたデジタルフォントにつまらなさを感じているのか、はたまた自分自身が写植の幻影に取り憑かれているのか。いや、昔の「ガロ」(コミック誌)の扉のタイトルに組まれた「YSEG-L」の美しさを知ってしまったら、誰だってきっと…。
 質の面でも、活字から写植文字に移行するときに同じようなことが言われたでしょうし、ちょうど今がそういう時期なのかなとも思いますが、人の情熱やエネルギーを形にするという点ではいつの時代も変わりはないはずです。自分にどれくらいの書体が作れるかという話は棚に上げて、近い将来上質なデジタルフォントが出てくることを期待しています。

【A】伊勢谷浩
まだまだ書体の種類が少なく、どこかシックリこなくても他に無いから仕様がなくて使っています。恐らくみなさんもそうだと思いますが…?
本文用の明朝やゴシックにしてもセレクトできる程の書体数もないし、私にはウエイトのファミリーも少ない気がします。基本書体でもディスプレイタイプでも、もっと色々な書体が有ると良いですよね!

【A】神田友美
見てうっとりするフォントもあれば、見るだけでなんだかテンションが下がるフォントもあり、様々です。でも実際使っているフォントは数える程しかありません。印刷会社と共通に持つ基本書体が主流になります。
 とっても魅力的なフォントに出会っても個人的に買うには高額で手が届かないのが現実です。使いたいフォントを簡単に入手できるようになればいいなぁ。と思います。

【A】長谷川眞策
1990年、Macの日本語フォントは「大阪フォント」「ゴシックBBB」「リュウミンL」しか無かった。カラーカンプと一緒に写植見本帳を持っていき、クライアントに「この書体になります?」…版下は手作業で写植切り貼りの世界。これらを考えればフォントも大変な進歩です。明朝・ゴシックの基本書体はあるし、ディスプレイ書体もそこそこ、できれば写研MM-OKLに近い「リョウビRF本明朝MT」が製版・印刷で自由に使える環境が欲しいくらいです。どういう範囲の仕事を手がけているかによって書体も選択されるので、まぁまぁ、満足かな?
【A】西田一成「「料理人(デザイナー)の立場でとらえると、満足していません。まず、使いたい魅力を感じる素材(書体)が少ない。毎日食べても飽きのこないお米(書体)、味付けご飯を作るのに向いているお米。やっぱり少ないですね。美味しいフォント1000の書体がどこまで受け入れられるか…。生産者は料理人の気持ちになって、素材を提供しなければならないと思います。出来れば生産者みずから料理人になってみせないといけないかも知れません。

【A】土屋淳
満足していません。
1.エッジの処理に限界があるのでしょうか? 堅く感じる書体が多い。
2.書体によってなのですが、同じポイント数なのに大きさや太さ(黒味など)が、見た目で違う。
3.OSやアプリケーション上の互換性の問題で使用書体が限られてしまうことも…。
 満足している部分としては、
1.人名など、変更や加工がしやすい。
2.クオリティは別にして、デジタルの特性を生かした書体も誕生し、選択範囲が広がった。

【A】味岡伸太郎
私はデジタルの時代の遥か前から、写植の時代を含めたこの15年間、私が制作に関係した書体しか使っていません。もちろん私は仮名を担当し、直接漢字の制作はしてはいないが、一応レベルのある漢字書体に適合した仮名を作ってきました。その結果、明朝・ゴシックから丸ゴシック・横太明朝まで、あまり使うことのないジャンルを含め、基本書体は自作の書体がファミリー化して揃っています。
 既成の書体が目的に合わない場合にはその都度制作することにしています。名刺の名前に使う明朝体が気にいらなければその都度書くことにしています。小町、良寛もそうして生まれました。一昨年には一冊の本の為に必要な漢字約400字を制作したし、現在も仲間と共に作る地方出版社のために一書体作ろうかと考えています。既成の書体に満足しなければ使える書体を作ればいいのではないか。そしてそれに汎用性があるのならばフォントとして販売することも可能となります。