【Q】神田友美
私は芸術系の大学に行っていないのでタイポグラフィについて学ぶ機会がありませんでした。本を読んでもなかなか難しく、肝心の作るという行為については白紙の状態です。書道をやっているのが救いでカンだけで作っています。半紙に書くかわりにマックに入力するというかんじです。なので皆さんがどうやって作っているのかとても興味があります。
今回のタイプフェイスのこだわりや苦労、また裏技などを教えていただけないでしょうか?

【A】棚瀬伸司
裏技なんてものはありませんが、苦労はありました。なにしろ今回は今まで作ったことも無い勘亭流というものを、いろんな経緯があって作ることになりました。これまで私が制作したフォントは、グリッドを作ってパーツをそれにあてはめていくという作業スタイルだったため、すべてがベジェ曲線の連続とも言える今回の作業は大変疲れました。

【A】長谷川眞策
MACでできる書体を制作している気はありません。どんなイメージの書体を作ろうか? イメージスケッチを元に、このイメージは可能だから MAC、無理だから手書きしかないな…これが正しいですね。実際に過去の1書体は MACでトライしましたが不可能、手書きでした。その後の2書体は可能でしたが、その内の一つはIllusutrator5.5Jでは可能ですが、8.01Jでは不可能。私のMACでは5.5Jも健在です。

【A】奥村昭夫
私も高校の商業科卒なのでアイデアだけでタイプフェイスをつくっています。

【A】土屋淳
自分も初めてなので(一般公募で参加したことはありますが)、全くの自己流です。鉛筆で10mm四方くらいのエスキースをおこし、イメージが固まったところでそのままMACに向かいます。それからが大変です。試行錯誤の繰り返しです。一字一字を良しとしても、字面がきれいかなど再考部分が多すぎて、にっちもさっちもいかなくなります。当然矛盾点もでてくるわけで、その時何を生かして何を殺すか、悩みどころ満載です。効率の良い自分のやり方を模索中です。…以前の仕事場で書体を扱う経験をしたのですが、兎に角、タイプフェイス創りは格闘技だな! と言うのが第一印象で、今もそう思ってます。

【A】和田庸伸
『苦労』はやっぱり僕らの文字はパースがかかってるぶん、普通の文字のバランスや視覚的な調整が微妙に分からなくなってしまうという所でした。『こだわり』というよりはやっぱり僕等はまだ文字を創ったこともなかったのでタイプフェイスのクオリティ的な問題でなんとか成立させなくてはということに必死でした。どうしてもプロの方々の作品とくらべると全然だと思いますし、まったくの初心者中の初心者です。でも僕等なりに頑張ってカタチにしたつもりです。
 『裏技』というよりは僕がやってたことを話します。たぶんみなさんやってることとは思いますが、とにかく作業する部屋一面に出力した制作途中の紙をベタベターと貼ることですね。そういうことをしなきゃ僕は全然どこを直したらいいかってことが全く見えなかったからです。なんだか自分の部屋がライブホールのフライヤーが貼ってあるかのように自分の創ってる文字だらけというのはある意味気が変になりそうな時もありました。
 作業がなんとか区切りがつくまでは剥がさないぞっと決めてたので終わった時はベリベリッと思いっきり剥がし綺麗に掃除したのがすっごく気持ちかったです。

【A】七種泰史
私も我流です。教えていただいた事もないし、自分なりに創っています。以前は4cm角くらいの大きさにラッションペンで下書きし、それをスキャンし、トレースということでやってましたが、ここ最近は1cm角くらいの大きさにメモ程度のラフを書きそれを見ながらMACに向かうことが多いです。大きく下書きを完璧に書いたつもりが小さくすると気づかなかった線と線のアキ、バランスが見えてきて何度もMAC上で修正をくり返ししている間にあまり正確な下書きは必要ないと思ったからです。小さく書いて感覚をつかむやり方に変わりました。あくまでも私流です。

【A】鈴木正広
近ごろは、毎日100字近くの文字を眺めたり、いじったりしています。その繰り返される修正作業のなかで、毎日何かしらの新しい発見があったりします。文字作りの日々は苦しくもあり、楽しさも感じています。
 デジタル文字の制作には、いろいろと裏技が有るようです。しかし、書体デザインにおいての裏技のようなものは無いような気がしています。まいにち、文字を見続ける事が技を磨くことになるかもしれません。

【A】神谷利男
私は高校から大学まで美術系のデザイン科でしたがタイポグラフィの授業はほとんどありませんでした。
 写植機の打ち込み練習1日と欧文カリグラフィ(あの平たいペンで書くやつ)、いわゆるレタリングを少々。わたしにとってタイポグラフィという言葉のひびきとそのビジュアルとしての世界は日本タイポグラフィ協会の年鑑の書籍としての価値から入っていったといっても過言ではありません(大層ですけど)。

【A】西田一成
ご安心ください。このメンバーにもデザイン学校をでていない人が何人かいます。タイプフェイスデザインに挑戦するのが初めてという人もいます。私もその一人。今回のタイプフェイスは隙間産業的な特徴のある書体を考えました。作業手順は込み入っていますが元になる字体は単純です。ルールに従ってストロークで字体をつくり、へんやつくりを分解してストックする。それを変形させたり、斜体をしたりして組合わせて書体を作る。次に線率を決めて、[ラフ]からブルブルの設定をします。[アウトライン]命令の後、[合体]して完成です。ストローク描きなのでラクしているかも知れません。